** | 2019年 12月改訂 ( 第2版 ) |
* | 2019年 8月改訂 |
日本薬局方
トリクロルメチアジド錠
処方箋医薬品 注1)
注1) 注意―医師等の処方箋により使用すること通常、成人にはトリクロルメチアジドとして1日2~8mgを1~2回に分割経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
ただし、高血圧症に用いる場合には少量から投与を開始して徐々に増量すること。また、悪性高血圧に用いる場合には、通常、他の降圧剤と併用すること。
急激な利尿があらわれた場合、急速な血漿量減少、血液濃縮を来し、血栓塞栓症を誘発するおそれがある。
高尿酸血症、高血糖症を来し、痛風、血糖値の悪化や顕性化のおそれがある。
電解質失調を起こすおそれがある。
血清カルシウムを上昇させるおそれがある。
低ナトリウム血症等の電解質失調を起こすおそれがある。[11.1.2 参照]
本剤の降圧作用が増強される。
投与しないこと。腎機能を更に悪化させるおそれがある。[2.2 参照]
腎機能を更に悪化させるおそれがある。
妊娠後期には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。チアジド系薬剤では、新生児又は乳児に高ビリルビン血症、血小板減少等を起こすことがある。また、利尿効果に基づく血漿量減少、血液濃縮、子宮・胎盤血流量減少があらわれることがある。
授乳しないことが望ましい。類薬において、ヒトで母乳中に移行することが報告されている。
乳児は電解質のバランスがくずれやすい。
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
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低ナトリウム血症が発現するおそれがある。 |
いずれも低ナトリウム血症が発現するおそれがある。 |
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
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臨床症状:起立性低血圧を増強することがある。 |
これらの薬剤は血管拡張作用を有するので、チアジド系利尿剤の降圧作用が増強されると考えられる。 |
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昇圧アミンの作用を減弱するおそれがあるので、手術前の患者に使用する場合には、本剤の一時休薬等を行うこと。 |
血管壁の反応性の低下及び交感神経終末からの生理的ノルアドレナリンの放出抑制が起こることが、動物試験で報告されている。 |
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麻痺作用を増強することがあるので、手術前の患者に使用する場合には、本剤の一時休薬等の処置を行うこと。 |
利尿剤による血清カリウム値の低下により、これらの薬剤の神経・筋遮断作用が増強されると考えられている。 |
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降圧作用を増強するおそれがあるので、降圧剤の用量調節等に注意すること。 |
作用機序が異なる降圧剤との併用により、降圧作用が増強されるとの報告がある。 |
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臨床症状:ジギタリスの心臓に対する作用を増強し、ジギタリス中毒を起こすおそれがある。 措置方法:血清カリウム値、ジギタリス血中濃度等に注意すること。 |
チアジド系利尿剤による血清カリウム値の低下により、多量のジギタリスが心筋Na+-K+ATPaseに結合し、心収縮力増強と不整脈が起こる。 |
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臨床症状:低カリウム血症が発現するおそれがある。 |
共にカリウム排泄作用を有する。 |
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血清カリウム値の低下があらわれやすくなる。 |
これらの薬剤は低カリウム血症を主徴とした偽アルドステロン症を引き起こすことがあり、本剤との併用により低カリウム血症を増強する可能性がある。 |
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糖尿病用剤の作用を著しく減弱するおそれがある。 |
機序は明確ではないが、チアジド系利尿剤によるカリウム喪失により膵臓のβ細胞のインスリン放出が低下すると考えられている。 |
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臨床症状:リチウム中毒(振戦、消化器愁訴等)が増強される。 措置方法:血清リチウム濃度の測定を行うなど注意すること。 |
チアジド系利尿剤は遠位尿細管でナトリウムの再吸収を抑制するが、長期投与では近位尿細管で代償的にナトリウム、リチウムの再吸収を促進し、リチウムの血中濃度が上昇する。 |
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利尿降圧作用が減弱される。 |
コレスチラミンの吸着作用により、利尿剤の吸収が阻害される。 |
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利尿降圧作用が減弱されることがある。 |
非ステロイド系消炎鎮痛剤のプロスタグランジン合成酵素阻害作用による腎内プロスタグランジンの減少が、水・ナトリウムの体内貯留を引き起こし、利尿剤の作用と拮抗する。 |
倦怠感、食欲不振、嘔気、嘔吐、痙攣、意識障害等を伴う低ナトリウム血症があらわれることがある。[2.3 参照],[9.1.5 参照]
倦怠感、脱力感、不整脈等を伴う低カリウム血症があらわれることがある。[2.3 参照]
5%以上又は頻度不明 |
0.1~5%未満 |
0.1%未満 |
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過敏症 |
発疹、顔面潮紅、光線過敏症 |
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血液 |
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白血球減少、血小板減少、紫斑 |
代謝異常 |
電解質失調(低クロール性アルカローシス、血中カルシウムの上昇等)、血清脂質増加、高尿酸血症、高血糖症 |
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肝臓 |
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肝炎 |
消化器 |
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食欲不振、悪心・嘔吐、口渇、腹部不快感、便秘 |
胃痛、膵炎、下痢、唾液腺炎 |
精神神経系 |
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眩暈、頭痛 |
知覚異常 |
眼 |
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視力異常(霧視等)、黄視症 |
その他 |
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倦怠感、動悸 |
鼻閉、全身性紅斑性狼瘡の悪化、筋痙攣 |
甲状腺障害のない患者の血清PBIを低下させることがある。
軽・中等症本態性高血圧症患者9例(食塩摂取量を7~10g/日に制限)に、トリクロルメチアジド4mgを1日1回朝食後(8時)に1週間経口投与し、第6日に採血した。血漿中濃度は、投与約3時間後に最高値0.088±0.010μg/mL(平均値±標準誤差)に達し、以後漸減し、8時間後では0.027±0.005μg/mLであった1) 。
イヌ血漿を用いたin vitro試験系で、血漿蛋白結合率は約85%であった2) 。
トリクロルメチアジドは、ヒト肝細胞を用いたin vitro試験系ではほとんど代謝を受けなかった3) 。
軽・中等症本態性高血圧症患者9例(食塩摂取量を7~10g/日に制限)に、トリクロルメチアジド4mgを1日1回朝食後(8時)に1週間経口投与し、第7日に採尿した。24時間後までの尿中累積排泄率は68.2±4.3%(平均値±標準誤差)であった1) 。
ヒト肝ミクロソームを用いたin vitro試験系で、CYP活性に対するトリクロルメチアジドの阻害作用について検討した結果、CYP1A2、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、CYP2E1及びCYP3A4/5を阻害しなかった3) 。
60歳以上の老年者高血圧症患者を2群に層別し、70例にトリクロルメチアジドを1日4mg投与し、51例を対照として、最長5年間にわたり降圧効果等を検討した。
血圧は観察期及び対照群に比べて、収縮期、拡張期血圧とも有意な下降を示し、5年間にわたり降圧効果が維持された。
また脳出血、心不全の発現は対照群に比べてトリクロルメチアジド投与群で少ない傾向を示した。脳・心血管系疾患の発症全体でも同様の傾向を示した4)
。
試験5日前より1日の食塩摂取量を10gに制限した健康成人(男性、35歳)に、早朝起床時より約60分間隔で2回の対照尿を採取した後、トリクロルメチアジド8mgを少量の水と共に単回経口投与し、以後約30分ごとに尿を採取した。
投与後100分以内に最大利尿を示し、利尿作用は約6~7時間持続した。Na+、Cl-の尿中排泄増加はほぼ等しかった。K+の尿中排泄増加は少なかった8)
。
軽・中等症本態性高血圧症患者36例にトリクロルメチアジド錠4mgを1日1回朝食後に2週間経口投与し、血圧及び脈拍数の経日変動、最終日の脈拍数と日内変動を測定した。
血圧値はいずれも観察期に比して下降したが、脈拍数は差を認めなかった。
また、血圧日内変動リズムは観察期との差を認めなかった9)
。
トリクロルメチアジド(Trichlormethiazide)(JAN)[日局]
(3RS)-6-Chloro-3-dichloromethyl-3,4-dihydro-2H-1,2,4-benzothiadiazine-7-sulfonamide 1,1-dioxide
C8H8Cl3N3O4S2
380.66
白色の粉末である。
N,N-ジメチルホルムアミド又はアセトンに溶けやすく、アセトニトリル又はエタノール(95)に溶けにくく、水にほとんど溶けない。
アセトン溶液(1→50)は旋光性を示さない。
約270℃(分解)
3.63[pH6.5、1-オクタノール/緩衝液]
1) 池田正男ほか:最新医学. 1986;41:134-140〔198602493〕
2) Taylor,R.M.et al.:J.Pharmacol.Exp.Ther. 1963;140:249-257〔196300003〕
3) 社内資料:トリクロルメチアジドのヒトin vitro代謝及びヒトCYP阻害の検討〔201300368〕
4) 寺沢富士夫:日本老年医学会雑誌. 1975;12:235-243〔197500165〕
5) Suki,W.N.et al.:The Kidney Second Ed.Vol.3, New York, Raven Press, 1992, pp.3629-3670〔199202412〕
6) Brest,A.N.et al.:JAMA. 1970;211:480-484〔197000143〕
7) 荻野耕一:最新医学. 1976;31:509-515〔197600136〕
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