2021年 8月改訂 ( 第1版 ) |
通常、成人にはアプリンジン塩酸塩として、1日40mgより投与をはじめ、効果が不十分な場合は60mgまで増量し、1日2~3回に分けて経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
1日用量60mgを超えて投与する場合、副作用発現の可能性が増大するので注意すること。本剤は非線形の薬物動態を示すため、増量の際は注意すること。[16.1.1 参照]
開始後1~2週間は入院させること。また、少量から開始するなど投与量に十分注意するとともに、頻回に心電図検査を実施すること。
心室頻拍、心室細動等が発現するおそれが高い。うっ血性心不全の患者においては心筋収縮力低下により、心不全を悪化させるおそれがある。[8.2 参照],[11.1.1 参照]
刺激伝導障害を増悪させるおそれがある。[8.2 参照],[11.1.1 参照]
徐脈を助長させるおそれがある。[8.2 参照],[11.1.1 参照]
パーキンソン様症状を増悪させるおそれがある。
QT延長、催不整脈(Torsades de pointes等)などを発現させるおそれがある。[11.1.1 参照]
少量から開始するなど投与量に十分注意するとともに、頻回に心電図検査を実施すること。併用時の有効性、安全性は確立していない。[8.2 参照]
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物(ラット)の乳汁中への移行が報告されている5) 。
小児等を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
入院させて開始することが望ましい。少量から開始するなど投与量に十分注意するとともに、頻回に心電図検査を実施すること。肝・腎機能が低下していることが多く、また、体重が少ない傾向があるなど副作用が発現しやすい。[8.2 参照]
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
---|---|---|
ジソピラミド |
動物実験において作用増強の報告があることから、刺激伝導障害(房室ブロック、脚ブロック等)を起こすおそれがあるので、慎重に投与すること。 |
心筋の最大脱分極速度を抑制することから、本剤並びに併用薬剤の刺激伝導系の抑制作用を相加的又は相乗的に増強すると考えられる。 |
ジルチアゼム塩酸塩 |
両剤の血中濃度が上昇したとの報告6) があるので、併用する場合には両剤共減量する等、慎重に投与すること。 |
肝臓の同一薬物代謝酵素に影響を及ぼし合い、両剤の血中濃度を上昇させる。 |
アミオダロン塩酸塩 |
アプリンジンの血中濃度が上昇するとの海外報告7) があるため、併用する場合には慎重に投与すること。 |
機序不明 |
両剤の中枢神経系及び心臓に対する副作用が増強される可能性が報告8) されているので、併用する場合には慎重に投与すること。 |
両剤の抗不整脈作用及び局所麻酔作用が、併用により相加することが考えられる。 |
|
ベラパミル塩酸塩 |
アプリンジンの血中濃度が上昇するとの報告9) があるので、併用する場合には慎重に投与すること。 |
ベラパミルによるチトクロームP450(CYP3A4)に対する競合的阻害作用による。 |
心室頻拍(Torsades de pointesを含む)等があらわれることがある。[2.1 参照],[8.2 参照],[9.1.1 参照],[9.1.2 参照],[9.1.3 参照],[9.1.5 参照]
無顆粒球症(初期症状:発熱、咽頭痛、全身倦怠感等)があらわれることがある。[8.1 参照]
間質性肺炎(初期症状:咳嗽、息切れ、呼吸困難、発熱等)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、胸部X線等の検査を行い、副腎皮質ホルモン剤等の投与など適切な処置を行うこと。
AST、ALT、γ-GTPの上昇等を伴う肝機能障害や黄疸があらわれることがある。[8.3 参照]
0.5~5%未満 |
0.5%未満 |
頻度不明 |
|
---|---|---|---|
肝臓 |
AST、ALT、γ-GTP、Al-P、LDH、総ビリルビンの上昇 |
肝炎、胆汁うっ滞性肝炎 |
|
血液 |
白血球減少 |
貧血、顆粒球減少 |
好酸球増多、血小板減少 |
循環器 |
徐脈、前胸部痛、PQ・QRS・QTcの延長、血圧低下 |
動悸、房室ブロック、洞停止、心不全 |
|
精神神経系 |
振戦、めまい・ふらつき |
眠気、足のもつれ、しびれ感、不眠、抑うつ症状、頭がボーとする、沈みこむ感じ |
幻覚、言語障害 |
視覚器 |
視力異常、緑視、複視 |
||
消化器 |
悪心・嘔気、食欲不振、口渇、嘔吐 |
消化不良、下痢、便秘、腹痛 |
|
過敏症 |
発疹 |
そう痒感 |
|
腎臓 |
排尿障害 |
腎機能異常 |
|
その他 |
発熱 |
倦怠感、頭痛、頭重感、抗核抗体の陽性化 |
CKの上昇、発汗 |
健康成人11)
及び不整脈患者12)
に経口投与した場合、消化管からの吸収は良好で投与後2~4時間で最高血漿中濃度に達する。
血漿中濃度の半減期は投与量に依存して延長し11)
、投与量と血漿中濃度は非直線関係を示す11)
,13)
。
アスペノンカプセルを単回投与後の血漿中濃度の推移及び投与量と血漿中濃度曲線下面積(AUC0~24)、最高血漿中濃度(Cmax)との関係は下図のとおりで、アプリンジン塩酸塩は非線形の薬物動態を示す11)
ため、投与量と最高血漿中濃度(Cmax)、曲線下面積(AUC)は比例しない。投与量の増加に伴い、半減期(T1/2β)は延長し、予想以上の血漿中濃度上昇が見られることがある。[7. 参照]
不整脈患者に反復経口投与した場合、血漿中濃度は7~14日でほぼ定常状態に達し、その後の消失半減期は約50時間である13)
,14)
。
不整脈患者(14名)にアスペノンカプセル60mgを反復投与した時の血漿中濃度推移は下図のとおりである14)
。
0.25~1.25μg/mL15)
94~97%(平衡透析法)11)
心室性及び上室性期外収縮を認めた患者を対象に、本剤(20mg 1日3回)とジソピラミド(100mg 1日3回)の有効性及び安全性を比較する多施設二重盲検群間比較試験を実施した。心室性期外収縮の全般改善度(改善以上)は本剤51/82例(62%)、ジソピラミド31/76例(41%)であり、上室性期外収縮では本剤18/31例(58%)、ジソピラミド12/21例(57%)であった19)
。
副作用(臨床検査値異常を含む)は139例中27例(19.4%)に認められ、主な副作用は悪心・嘔気・嘔吐・気分不快6例、口渇6例等であった。
第Ⅱ相試験2試験、上記の第Ⅲ相試験1試験、一般臨床試験6試験、長期投与試験10試験で本剤を投与された898例中効果判定欠測の114例を除く784例の効果判定結果は次のとおりであった。
疾患名 |
効果判定例数 |
有効例数 |
有効率(%) |
|
心室性 |
期外収縮 |
494 |
315 |
63.8 |
頻拍 |
22 |
19 |
86.4 |
|
2疾患合併 |
36 |
25 |
69.4 |
|
上室性 |
期外収縮 |
88 |
53 |
60.2 |
発作性頻拍 |
20 |
15 |
75.0 |
|
発作性心房細・粗動 |
55 |
37 |
67.3 |
|
2疾患合併 |
25 |
18 |
72.0 |
|
心室性及び上室性の合併 |
44 |
33 |
75.0 |
|
合計 |
784 |
515 |
65.7 |
副作用(臨床検査値異常を含む)は850例中138例(16.2%)に認められた。
心筋細胞のNaイオンチャネル抑制作用により、活動電位の最大脱分極速度(Vmax)を抑制し、心筋の興奮性、刺激伝導系を抑制することにより抗不整脈作用をもたらす。
Sicillian Ganbit(日本版)による薬剤分類によると本剤はNaイオンチャネル抑制作用だけでなく、Caイオンチャネル、Kイオンチャネルなどに抑制的な作用をもたらし、心房、心室筋の各活動電位相に影響をもたらし抗不整脈作用を発揮すると考えられている。
イヌのプルキンエ線維及び心室筋の最大脱分極速度(Vmax)を用量依存性に抑制し、モルモット心室筋のVmaxを刺激頻度依存性及び膜電位依存性に抑制する22) ,23) 。
モルモットの心室乳頭筋のNaチャネルを活性化状態(AC)よりもむしろ不活性化状態(IC)でより強く抑制する24) 。
イヌのプルキンエ線維の活動電位持続時間(APD)を用量依存性に短縮させ、心室筋のAPDを僅かに延長させる。
ウシのプルキンエ線維の有効不応期(ERP)を短縮させるが、ERP/APD比を増大させ、心室筋のERPを延長させる25) 。
ウシのプルキンエ線維の低カリウム、ノルアドレナリンによる自発性拡張期脱分極を抑制する25) 。
ウサギ摘出心臓の心房-ヒス伝導時間(AH時間)及びヒス-心室伝導時間(HV時間)を延長させる26) 。
不整脈患者42例(14~82歳)に本剤100mgを静脈内投与した場合、洞周期、最大洞自動能回復時間及び洞房伝導時間を変化させず、AH時間、HV時間を延長させ、また、心房筋、房室結節及び心室筋のERPを延長させる27) 。
心室性不整脈患者9例(15~62歳)に本剤50~75mgを反復投与した場合、心拍数、血圧及び左室駆出率に変化はみられない28) 。
アプリンジン塩酸塩(Aprindine Hydrochloride)
N-(2,3-Dihydro-1H-inden-2-yl)-N’,N’-diethyl-N-phenylpropane-1,3-diamine monohydrochloride
C22H30N2・HCl
358.95
本品は白色~微黄白色の結晶性の粉末であり、味は苦く、舌を麻痺する。
本品は水、メタノール又は酢酸(100)に極めて溶けやすく、エタノール(99.5)に溶けやすい。
本品は光によって徐々に褐色となる。
127~131℃
外箱開封後は遮光して保存すること。
1) Van Leeuwen R: Ned T Geneesk. 1976; 120: 1549-1550
2) Hausamen TU, et al.: Dtsch med Wschr. 1977; 102: 1523-1524
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4) 駒井義生他: 薬理と治療. 1987; 15: 1133-1141
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