* | 2020年 12月改訂 ( 第2版 ) |
2020年 9月作成 ( 第1版 ) |
原因となる器質的病変、心理的・社会的要因、依存リスクを含めた包括的な診断を行い、本剤の投与の適否を慎重に判断すること。
通常、成人にはトラマドール塩酸塩として1日100~300mgを2回に分けて経口投与する。なお、症状に応じて適宜増減する。ただし1回200mg、1日400mgを超えないこととする。
本剤を初めて投与する場合は、1回50mgから開始することが望ましい。なお、他のトラマドール塩酸塩経口剤から切り替える場合は、その経口剤の1日投与量、鎮痛効果及び副作用を考慮して、本剤の初回投与量を設定すること。
本剤の投与は1日2回とし、朝、夕に服用することが望ましい。
本剤投与開始後に患者の状態を観察し、適切な鎮痛効果が得られ副作用が最小となるよう用量調整を行うこと。増量・減量の目安は、1回50mg、1日100mgずつ行うことが望ましい。
本剤の投与開始後4週間を経過してもなお期待する効果が得られない場合は、他の適切な治療への変更を検討すること。また、定期的に症状及び効果を確認し、投与の継続の必要性について検討すること。
本剤の投与を必要としなくなった場合は、退薬症候の発現を防ぐために徐々に減量すること。
75歳以上の高齢者では、本剤の血中濃度が高い状態で持続し、作用及び副作用が増強するおそれがあるので、1日300mgを超えないことが望ましい。[16.6.1 参照]
投与しないこと。重篤な呼吸抑制のリスクが増加するおそれがある。
本剤投与中は観察を十分に行うこと。痙攣発作を誘発することがある。[2.6 参照]
厳重な医師の管理下に、短期間に限って投与すること。依存性を生じやすい。
呼吸抑制を増強するおそれがある。
呼吸抑制や頭蓋内圧の上昇を来すおそれがある。
循環不全や呼吸抑制を増強するおそれがある。
投与しないこと。高い血中濃度が持続し、作用及び副作用が増強するおそれがある。[2.7 参照]
高い血中濃度が持続するおそれがある。
投与しないこと。高い血中濃度が持続し、作用及び副作用が増強するおそれがある。[2.7 参照]
高い血中濃度が持続するおそれがある。
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。胎盤を通過し、退薬症候が新生児に起こる可能性がある。なお、動物実験で、器官形成、骨化及び出生児の生存に影響を及ぼすことが報告されている。
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。静脈内投与(国内未承認)の場合、0.1%が乳汁中に移行することが知られている。
投与しないこと。海外において、12歳未満の小児で死亡を含む重篤な呼吸抑制のリスクが高いとの報告がある。[2.1 参照]
12歳以上の小児に対する有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
投与しないこと。重篤な呼吸抑制のリスクが増加するおそれがある。
患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。生理機能が低下していることが多く、代謝・排泄が遅延し副作用があらわれやすい。
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
---|---|---|
外国において、セロトニン症候群(錯乱、激越、発熱、発汗、運動失調、反射異常亢進、ミオクローヌス、下痢等)を含む中枢神経系(攻撃的行動、固縮、痙攣、昏睡、頭痛)、呼吸器系(呼吸抑制)及び心血管系(低血圧、高血圧)の重篤な副作用が報告されている。モノアミン酸化酵素阻害剤を投与中の患者又は投与中止後14日以内の患者には投与しないこと。また、本剤投与中止後にモノアミン酸化酵素阻害剤の投与を開始する場合には、2~3日間の間隔をあけることが望ましい。 |
相加的に作用が増強され、また中枢神経のセロトニンが蓄積すると考えられる。 |
|
離脱症状を起こすおそれがある。本剤の鎮痛作用を減弱させるため、効果を得るために必要な用量が通常用量より多くなり、呼吸抑制等の中枢神経抑制症状が発現するおそれがある。ナルメフェンを投与中の患者又は投与中止後1週間以内の患者には投与しないこと。 |
ナルメフェンのμオピオイド受容体拮抗作用により、本剤に対して競合的に阻害する。 |
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
---|---|---|
痙攣閾値の低下や呼吸抑制の増強を来すおそれがある。 |
本剤と相加的に作用が増強されると考えられる。 |
|
セロトニン症候群(錯乱、激越、発熱、発汗、運動失調、反射異常亢進、ミオクローヌス、下痢等)があらわれるおそれがある。 |
相加的に作用が増強され、また、中枢神経のセロトニンが蓄積すると考えられる。 |
|
リネゾリド |
セロトニン症候群(錯乱、激越、発熱、発汗、運動失調、反射異常亢進、ミオクローヌス、下痢等)があらわれるおそれがある。 |
リネゾリドの非選択的、可逆的モノアミン酸化酵素阻害作用により、相加的に作用が増強され、また、中枢神経のセロトニンが蓄積すると考えられる。 |
アルコール |
呼吸抑制が生じるおそれがある。 |
本剤と相加的に作用が増強されると考えられる。 |
カルバマゼピン |
同時あるいは前投与で本剤の鎮痛効果を下げ作用時間を短縮させる可能性がある。 |
本剤の代謝酵素が誘導される。 |
キニジン |
相互に作用が増強するおそれがある。 |
機序不明 |
ジゴキシン |
外国において、ジゴキシン中毒が発現したとの報告がある。 |
機序不明 |
オンダンセトロン塩酸塩水和物 |
本剤の鎮痛作用を減弱させるおそれがある。 |
本剤の中枢におけるセロトニン作用が抑制されると考えられる。 |
ブプレノルフィン |
本剤の鎮痛作用を減弱させるおそれがある。また、退薬症候を起こすおそれがある。 |
本剤が作用するμ-オピオイド受容体の部分アゴニストである。 |
出血を伴うプロトロンビン時間の延長、斑状出血等の抗凝血作用への影響がみられたとの報告がある。 |
機序不明 |
呼吸困難、気管支痙攣、喘鳴、血管神経性浮腫等があらわれることがある。
長期使用時に、耐性、精神的依存及び身体的依存が生じることがある。本剤の中止又は減量時において、激越、不安、神経過敏、不眠症、運動過多、振戦、胃腸症状、パニック発作、幻覚、錯感覚、耳鳴等の退薬症候が生じることがある。[8.1 参照]
5%以上 |
1~5%未満 |
1%未満 |
頻度不明 |
|
---|---|---|---|---|
消化器 |
悪心 |
腹部不快感 |
消化不良、胃炎、腹部膨満感、下痢、胃食道逆流性疾患、上腹部痛、口内炎、出血性胃炎、口唇炎、口角口唇炎 |
口の錯感覚、胃腸音異常、口内乾燥、腹痛、おくび、イレウス |
精神神経系 |
傾眠 |
頭痛 |
回転性めまい、振戦、不眠症、耳鳴、味覚異常、感覚鈍麻、頭部不快感、片頭痛、体位性めまい、錯感覚、譫妄、不安 |
睡眠障害、健忘、幻覚、鎮静、悪夢、落ち着きのなさ、活動性低下、異常行動、無感情、不快気分、不随意性筋収縮、記憶障害、ジスキネジー、眼振、疲労、気分変動、うつ病、頭重感、激越、抑うつ気分、両手のしびれ感、ふらつき感、不快感、協調運動異常、失神、錯乱、精神運動亢進、錯覚、言語障害 |
呼吸器 |
呼吸困難、口腔咽頭痛、咽喉乾燥、口腔咽頭不快感、発声障害 |
|||
循環器 |
動悸、高血圧、ほてり |
不整脈、蒼白、胸内苦悶、頻脈、徐脈、血圧上昇、血圧低下、起立性低血圧 |
||
血液凝固系 |
ヘマトクリット減少、血小板減少、好中球増加、好酸球増加・減少、リンパ球減少、ヘモグロビン減少、赤血球減少、白血球増加 |
|||
肝臓 |
肝機能異常、ALT増加、AST増加、LDH増加 |
Al-P増加、ビリルビン増加 |
||
皮膚 |
そう痒症、多汗症 |
湿疹、発疹、薬疹、冷汗、全身性そう痒症 |
蕁麻疹、寝汗 |
|
腎臓及び尿路系 |
排尿困難 |
尿中血陽性、尿中ブドウ糖陽性、膀胱炎、頻尿、尿閉、血中クレアチニン増加、尿量減少 |
尿蛋白陽性、BUN増加、夜間頻尿 |
|
代謝異常 |
血中尿酸増加、脱水 |
トリグリセリド増加 |
||
その他 |
口渇 |
倦怠感、CK増加 |
末梢性浮腫、異常感、胸部不快感、体重減少 |
熱感、視力障害、背部痛、疼痛、霧視、散瞳、無力症、関節痛、四肢痛、筋骨格硬直、易刺激性、悪寒、発熱、冷感、視調節障害、心電図QT延長、浮腫、転倒 |
健康成人男性7例にトラマドール塩酸塩徐放錠をそれぞれ50mg、100mg、200mg、400mg注1)絶食下に単回投与した時、トラマドール及び活性代謝物O-デメチルトラマドール(M1)のCmax及びAUC0-infにおいて、用量比例性が認められた。1)
,2)
注1)本剤の承認用量における1回投与量は最大200mgである。
健康成人男性22~24例を対象とし、トラマドール塩酸塩徐放錠をそれぞれ50mg、100mg、150mgで絶食下に単回投与した時、トラマドール及びM1のCmax及びAUC0-tが用量に依存して増加した。3)
トラマドール |
|||
\ |
本剤 |
||
50mg |
100mg |
150mg |
|
Cmax |
114.0 |
207.5 |
325.5 |
tmax(h) |
1.04 |
1.28 |
1.51 |
t1/2(h) |
8.598 |
7.853 |
7.596 |
AUC0-t |
1265.6 |
2301.1 |
4101.5 |
M1 |
|||
\ |
本剤 |
||
50mg |
100mg |
150mg |
|
Cmax |
26.68 |
54.12 |
69.79 |
tmax(h) |
1.38 |
1.63 |
2.57 |
t1/2(h) |
11.658 |
9.727 |
8.898 |
AUC0-t |
420.41 |
822.17 |
1201.37 |
健康成人男性6~7例にトラマドール塩酸塩徐放錠をそれぞれ1回50mg、100mgを1日2回7日間反復投与した時、トラマドール及び活性代謝物M1共に投与後約24時間までに定常状態に達し、Cmax及びAUC0-12は投与1日目の約2倍であった。2)
健康成人男性18~20例にトラマドール塩酸塩徐放錠をそれぞれ50mg、100mg、150mg絶食下又は高脂肪食後に単回投与した時、いずれの製剤も絶食投与と高脂肪食後投与のトラマドールのCmax及びAUC0-tにおいて、食事の影響は認められなかった。また、食後投与でtmaxが約1時間延長した。4)
14C-トラマドール塩酸塩を雄性ラットに2mg/kgの用量で単回経口投与した結果、投与後0.5時間でほぼ全身に放射能分布がみられ、肝臓、腎臓及び膵臓では血漿中放射能濃度と比較して高い分布を示した。その後、血漿と同様に各組織中から速やかに消失し、放射能濃度は投与後24時間で最高値の10%以下に低下した。14C-トラマドール塩酸塩を妊娠ラットに単回経口投与した結果、放射能は胎盤を通過して胎児に分布した。胎児中放射能濃度は母体の血液中濃度と同程度で、胎児中からの消失は母体の血液中放射能と同様に速やかであった。
ヒト血漿タンパク質との結合率(in vitro)は、25~2000ng/mLの濃度範囲で25~30%であった。5)
トラマドールの主な代謝経路は、N-脱メチル化又はO-脱メチル化(第I相反応)とO-脱メチル化代謝物の抱合化である。
活性代謝物O-デメチルトラマドール(M1)などのO-脱メチル化はCYP2D6、N-脱メチル化はCYP3A4が主に関与している。6)
副作用の発現率は80.2%(199/248例)であった。10%以上発現した副作用は、悪心44.4%(110/248例)、便秘40.7%(101/248例)、傾眠21.4%(53/248例)、嘔吐17.7%(44/248例)であった。8)
副作用発現率は、70.7%(176/249例)であった。10%以上発現した副作用は、便秘43.0%(107/249例)、悪心33.3%(83/249例)、傾眠18.5%(46/249例)、浮動性めまい10.8%(27/249例)であった。9)
注2)二重盲検期への移行基準
原疾患別の最終評価時における |
|||
原疾患 |
例数 |
過去24時間 |
過去24時間 |
腰痛症 |
29例 |
-3.13 |
-2.88 |
変形性膝関節症 |
29例 |
-2.56 |
-2.27 |
関節リウマチ |
10例 |
-2.91 |
-2.26 |
脊柱管狭窄症 |
25例 |
-2.76 |
-2.38 |
帯状疱疹後神経痛 |
19例 |
-2.84 |
-2.04 |
有痛性糖尿病性神経障害 |
17例 |
-3.64 |
-3.39 |
線維筋痛症 |
30例 |
-4.70 |
-4.06 |
複合性局所疼痛症候群 |
11例 |
-1.95 |
-1.85 |
合計 |
170例 |
-3.18 |
-2.77 |
平均値±標準偏差 |
---|
副作用発現率は88.5%(154/174例)であった。10%以上発現した副作用は、悪心が52.9%(92/174例)、便秘が36.8%(64/174例)、傾眠が24.1%(42/174例)、嘔吐が20.1%(35/174例)、浮動性めまいが10.9%(19/174例)であった。10)
トラマドール塩酸塩及び活性代謝物Mlは、μ-オピオイド受容体に対する作用に加えて、抗うつ作用様のセロトニン及びノルアドレナリンの再取込み阻害による下行性疼痛抑制系の活性化作用を有しており、これら二つの作用によって鎮痛効果を発揮すると考えられる。
オピオイド受容体(μ、δ及びκ)に対する親和性をラットの脳標本を用いて検討した結果、トラマドール塩酸塩はδ及びκ-オピオイド受容体に対しても親和性を有したが、μ-オピオイド受容体に対する親和性が最も高かった。活性代謝物M1のラットμ-オピオイド受容体に対する結合親和性は、トラマドール塩酸塩より高かった。(in vitro)11)
ラットの脳標本を用いてシナプトソームへのノルアドレナリン及びセロトニンの再取込み阻害活性を検討した結果、トラマドール塩酸塩はノルアドレナリン及びセロトニンの再取込みを阻害した。M1の再取り込み阻害作用はトラマドール塩酸塩と比べて弱かった。(in vitro)11)
酢酸ライジング法による侵害刺激実験において、トラマドール塩酸塩は経口投与で鎮痛効果を示したが、モルヒネよりも弱かった。12)
μ-オピオイド受容体拮抗薬ナロキソンはトラマドール塩酸塩経口投与及びM1静脈内投与による鎮痛効果に拮抗した。α2-アドレナリン受容体拮抗薬ヨヒンビンはトラマドール塩酸塩経口投与による鎮痛効果に対して拮抗したが、M1静脈内投与の鎮痛効果には拮抗しなかった。12)
,13)
テイルフリック法による侵害刺激実験において、トラマドール塩酸塩及びM1は脊髄クモ膜下腔内投与で鎮痛効果を示したが、M1の鎮痛効果はトラマドール塩酸塩よりも強かった。セロトニン2型受容体拮抗薬リタンセリンはトラマドール塩酸塩の脊髄クモ膜下腔内投与による鎮痛効果に対して拮抗したが、M1の脊髄クモ膜下腔内投与による鎮痛効果には拮抗しなかった。14)
トラマドール塩酸塩(Tramadol Hydrochloride)
(1RS,2RS)-2-[(Dimethylamino)methyl]-1-(3-methoxyphenyl)cyclohexanol monohydrochloride
C16H25NO2・HCl
299.84
白色の結晶性の粉末である。
水に極めて溶けやすく、メタノール、エタノール(95%)又は酢酸(100%)に溶けやすい。
180~184℃
PTPシート又は容器開封後は、高温高湿を避けて保存すること。
2) 社内資料:ツートラム錠の第I相単回投与追加試験並びに反復投与試験
6) Grond S, et al. : Clin Pharmacokinet. 2004; 43(13):879-923
7) 社内資料:変形性膝関節症の高齢患者を対象としたツートラム錠の第II相薬物動態及び最大耐量探索試験
8) 社内資料:変形性膝関節症に対するツートラム錠の第III相臨床試験
9) 社内資料:帯状疱疹後神経痛に対するツートラム錠の第III相臨床試験
10) 社内資料:非がん性慢性疼痛に対するツートラム錠の長期投与試験
11) 社内資料:in vitroにおける鎮痛作用機序の検討
12) 社内資料:酢酸ライジング法を用いた鎮痛作用機序の検討-μオピオイド受容体-
13) 社内資料:酢酸ライジング法を用いた鎮痛作用機序の検討-ノルアドレナリンとセロトニン受容体-
14) 社内資料:ラットのtail flick試験を用いた鎮痛作用機序の検討-セロトニン受容体-
15) 社内資料:ラット変形性関節症モデルにおける薬効薬理試験
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